A1.
「災害対策」と「BCP」は、災害に備えるという点では同じです。
しかし、災害対策は、災害時に受ける被害を最小限に減らすことを目的にしており、BCPは、できるだけ事業を継続できるようにすることを目的にしています。
BCPは、災害対策を抱合しています。
災害対策は、人命の安全、建物や機械設備などの保全が重要ですが、BCPは災害対策を行って、さらにその先の「以下に早くビジネスを復旧させるか」という取組も含まれます。
具体的には、優先的に復旧するべき中核事業を設定し、復旧目標を明示し、目標を実現するための準備は何があるかを考え、対策を打つところまで行います。ですから、災害対策のように、本社や工場など、それぞれ拠点別に取り組むわけではなく、ビジネス単位で取り組む必要があります。
例えば、中核事業として「A製品」として、A製品はX工場とY工場で作った部品をZ工場で組み立てて出来上がるとすれば、X工場、Y工場、Z工場を一貫してBCPとして取り組む必要があります。(細谷 宏)
Q2.BCPがある企業とない企業の違いは?
A2.
中小企業庁:中小企業BCP(事業継続計画)ガイドに以下のような記事があります。
あらかじめルールを決めて周知しておく。
関係者と話をつけておき、いざというときに連携する。
こういったことで緊急時の事業継続に大きな差が出るのですね。(細谷 宏)
Q3.安否確認はどうしたら良いか?
A3.
安否確認方法を決めるにあたり3つのステップに分けて考えます。
1.安否確認の目的を明確にする
2.自社に合った確認方法を選ぶ
3.安否確認運用のルールを作る
それでは順番に考えていきましょう。
1.安否確認の目的を明確にする
安否確認のルールが決められている会社は多くあると思いますが、社員さんは何のために安否確認をするのかしっかり伝わっていますでしょうか?これがしっかり伝わっていないと緊急事態発生時に安否状況が集まってきません。しっかり考えて社員さんに伝えましょう。
2.自社に合った確認方法を選ぶ
やり方としては ①社員が自発的にルールに従って安否を入れる。②民間の安否システムを導入して自動発信しネットで確認をする。③総務担当等が安否確認を促すメールや電話をして返信させる。
手段としては携帯メール、ネットの掲示板、171伝言ダイヤル、固定電話、携帯電話などです。それぞれ一長一短がありますので業態や社員数はもちろんですが複数事業所がある場合はどこにあるかを検討する必要があります。また、個人情報の取扱いになるので管理には気を付けなければなりません。1つの方法だけにとらわれずにメールがダメなら固定電話、固定電話がダメなら伝言ダイヤルと優先順位をつけ複数の方法を検討することが大切です。
【停電時でも使用できる電話】
3.安否確認運用のルールを作る
①発動基準を明確にする ②誰に報告するか ③どの手段で報告するか ④何を報告するか ⑤定期的に確認(訓練)をする
また、地震発生の曜日や時間帯によって違うルールも必要でしょう。
緊急事態発生時には想定外の事が発生します。例えば携帯電話の番号が変わっている。携帯電話や携帯カードを持ち歩いていなかったので連絡ができなかった。システムが起動せず自動発信されなかった。停電でネットで確認がきなかった。等々
安否確認の方法で完璧なものはありません。また、いくら仕組みを作っても運用する側の意識が低ければ全く機能しません。定期的に訓練や見直しが必要です。そして何よりも「1.安否確認の目的を明確にする」そして社員さんとみんなで考えて作ることが一番大切だと思います。(谷内量)
Q4.地震発生時の避難計画のポイントは?
BCP策定時のマニュアルとして避難計画も重要になります。しかし、会社にいたときに地震が発生したら、意外に皆さんわかってない場合が多いです。
会社の置かれた状況によって違いますが、今回は一般的な例をあげたいと思います。
工場の例
①地震が発生したら、すぐに機械から離れる。
②揺れがおさまってから手順に応じて機械を止める。
➂リーダーは出口を確保する。
④工場の外に一次避難場所をもうけ避難経路に従って一次避難場所にうつる。
⑤津波の危険があれば高台や近所のビルなどに避難する。(避難場所はあらかじめ設定しておく)
⑥安全確認ができた後被災状況を確認し緊急対策本部に報告する。
建設現場の例
①地震が発生したら工事を中断し建設現場を離れる。
②地震発生後、現場監督の指示であらかじめ設定した一次避難場所にうつる。
➂津波の危険があれば高台や近所のビルなどに避難(避難場所はあらかじめ設定しておく)
④安全確認ができたあと被災状況を確認し本社に状況を報告する。
オフィスの例
①地震発生と同時に机の下に隠れる。
②すぐに外に出る必要はない。ただし昭和56年以前の旧建築基準法上の建築物は地震が発生したらすぐに外に出る。
➂地震発生後、いったん外に出て安全を確認。ビル内が安全であればビルに戻る。近隣で火災が発生するなど危険が迫っていればあらかじめ決めていた避難場所へ(広域避難場所など)
重要なのは避難訓練で何度も確認すること。従業員携帯カードなどに緊急時の対応の仕方を書いておくことです。また、避難計画を策定するには前もってハザードマップなどの確認で自社に想定される被害をきっちり確認しておくことも重要です。(竹上将人)
Q5.被害想定と目標復旧時間の設定について
A5.
名古屋では震度6弱から震度6強が予想されています。この地震が発生したらと質問すると「うちは海が近く津波がきたら終わりだよ」「うちは建物設備が古いから大地震がきたら倒壊して終わりだよ」と返ってくることが多いです。これは東日本大震災での最悪の状況をイメージしてしまいあきらめてしまうパターンです。目標復旧時間を設定する上で大切なことは被害の段階(フェイズ)毎の被害想定です。震度6弱や6強の時と考えるのではなく、被害の段階(フェイズ)に分けて考えるとよいでしょう。
例)
フェイズ1 3日~1週間インフラが停止している状態
フェイズ2 設備、原料調達等に損害が発生し復旧に1週間程度かかる状態
フェイズ3 設備、原料調達等に損害が発生し復旧に2週間以上かかる状態
フェイズ4 設備、原料調達等に損害が発生し復旧に1カ月以上かかる状態
被害想定がないと目標復旧時間も設定することができません。
また、同じ設備等に損害が発生していてもフェイズ2と4では対策対応が全く違います。
次に目標時間の設定です。
お客様からよく耳にすることがあります。それは「取引先である自動車メーカーさんから震度6弱以上の地震が発生した時に2週間以内に商品の供給を再開できるBCPの策定を提出しなさい」というものです。なぜこのようなことを求めるのでしょうか?
日本の基幹産業である自動車製造ラインが長期間ストップすると日本経済に及ぼす影響を考えれば早いに越したことはないでしょう。しかし部品が一つでも調達ができない状況が発生すると製造ラインはストップしてしまいます。実際に2007年7月16日に発生した中越沖地震を例に考えてみましょう。中越沖地震では自動車部品メーカーリケンが被災し工場が停止しました。リケンの製造するピストンリングは、国内の全自動車メーカーに50%のシェアを有していました。この工場は自動車メーカーの強力な支援で1週間で中核事業を再開することができました。その影響で日本の全自動車工場は3日間操業を停止する事態に陥ったのです。
ここで考えなければならないのが災害発生時に自社は社会(お客様取引先)から何を求められるかです。リケンのように自動車業界のサプライチェーンを構成する企業であるならば1社でも1つの部品が供給できないだけで操業停止を余儀なくされます。つまりサプライチェーンの一員であるならば復旧がバラバラでは困るのです。目標復旧時間は共有する必要があります。
建築・土木業はではどうでしょうか。道路や建物に損害が発生し社会(お客様取引先)は何を基もているでしょうか。医療関係や福祉関係の例としてグループホームをで考えてみましょう。停電していようがライフラインが停止していようが命を預かっているので事業停止することができません。このように目標復旧時間の設定は自社が社会に対する責任から考える事が大切です。
また、目標復旧時間を設定しないとどうなるのでしょうか?
被害想定でフェイズ4 設備に損害が発生し復旧に1カ月以上かかる状態になった時を例に考えてみましょう。
①地道に片付けをして修理の手配をかけて2か月かかって生産再開、商品の供給再開。
②目標復旧時間を2週間と設定しており代替え手段でお客様への商品サービスの提供を2週間で再開し、片付け修理が3か月かかっり生産再開。
①と②では取引先はどうなるでしょうか?
まとめ
被害想定は被害の段階(フェイズ)に分けて考える。目標復旧時間は社会(お客様取引先)から何を求められるかから考える事が大切です。(谷内量)